村上春樹のスピーチ「非現実的な夢想家として」と、東日本大震災から3ヶ月

2011.06.11

原爆死没者慰霊碑
 
東日本大震災から、3ヶ月が過ぎました。

あんまり書くつもりはなかったのですが、大きな存在感を持ってそこにあったので、気がつけば結構たくさんの震災や放射能関連の記事を書いてきました。
 
ちょうど村上春樹がスペインのカタルーニャ国際賞授賞式で語った「非現実的な夢想家として」というスピーチが、上手く言葉に出来なかった私の想いを代弁してくれていたので、引用しつつ、この3ヶ月を振り返っておきます。
 
 

ご存じのように、去る3月11日午後2時46分に日本の東北地方を巨大な地震が襲いました。地球の自転が僅かに速まり、一日が百万分の1.8秒短くなるほどの規模の地震でした。

東京でもかなりの揺れに。私の仕事場ではモニターが倒れ、本棚の本は散乱し、立っていられなくなるぐらいでした。
・東京で震度5強。マンションの9階にある仕事場ではモニターが倒れた[Link]
 
 
毎日のように揺れる地面と空っぽのスーパー、節電のためにつかない街灯や悲惨な現実を映し出すテレビが追い打ちをかけました。
・被災地へ医療スタッフとして行ってきた普通の女の子の日記[Link]
 

もし自分がその立場になっていたらと想像すると、胸が締めつけられます。

たくましい想像力が少しづつ私の心の平静を失わせていきました。たぶん震災から1週間後ぐらいが精神的な疲労のピークだったのかもしれません。結構ヒステリックな記事を書いています。
・東日本大震災、東京で揺れたのはきっと僕らの未来[Link]
 
 

日本語には無常(mujo)という言葉があります。いつまでも続く状態=常なる状態はひとつとしてない、ということです。この世に生まれたあらゆるものはやがて消滅し、すべてはとどまることなく変移し続ける。永遠の安定とか、依って頼るべき不変不滅のものなどどこにもない。

10日ぐらいしたころでしょうか。私のなかでパチンとこの「無常」のスイッチが入ったような気がします。直下型で震度7が来たら駄目かもしれない。いくら気をつけていてもあの津波に出会ったらもう駄目だろう。というあきらめにも似た感覚で、急に揺れていることが怖くなくなったのを覚えています。
 
 
でも問題はもう一つありました。福島第一原子力発電所からの放射能汚染です。こちらは天災である震災とは違って、効率より命を最優先に考えたら防げたかもしれない人災でした。
・AERA「放射能がくる」(2011年3月28日号)が怖い[Link]
 

十万に及ぶ数の人々が、原子力発電所の周辺地域から立ち退きを余儀なくされました。畑や牧場や工場や商店街や港湾は、無人のまま放棄されています。そこに住んでいた人々はもう二度と、その地に戻れないかもしれません。その被害は日本ばかりではなく、まことに申し訳ないのですが、近隣諸国に及ぶことにもなりそうです。

東京で起った最初の大きな影響は、3月22日に浄水場で通常の限界値の210倍もの放射性物質が検出されたことでしょうか。あっという間にスーパーから水が消えました。
・放射能に汚染された水を飲むことについて[Link]
・放射性物質も除去するテラオカの逆浸透膜浄水技術を使ったスーパーサミットの「美し水(うましみず)」[Link]
 
子どもたちだけは少しでも被ばくから防ぎたい。その一心から、ずいぶんとたくさんの情報を読み解き、知らない単語を覚えたような気がします。
・それで結局、何ベクレルの食べ物なら食べても大丈夫なの?まとめ[Link]
・子どもの放射線被ばくについて考えるときに知っておくべきたった一つのこと[Link]
 
 

日本政府は、とくにオイルショック以降、原油供給の安定性に疑問を持ち、原子力発電を国策として推し進めるようになりました。電力会社は膨大な金を宣伝費としてばらまき、メディアを買収し、原子力発電はどこまでも安全だという幻想を国民に植え付けてきました。

そう、東京電力のホームページはウソだらけでした。
・東京電力のホームページに掲載されていた原子力発電所の地震対策[Link]
 
 

我々日本人は核に対する「ノー」を叫び続けるべきだった。それが僕の意見です。

4月10日、東京では都知事選挙が行われましたが、原発推進派の石原慎太郎が圧勝しています。残念ながら原子力を、核を選んだ加害者でもある我々は何一つ学んでいないのかもしれません。
・2011年東京都知事選挙。誰が誰に投票したのか調べてみた[Link]
 
 

我々は夢を見ることを恐れてはなりません。そして我々の足取りを、「効率」や「便宜」という名前を持つ災厄の犬たちに追いつかせてはなりません。我々は力強い足取りで前に進んでいく「非現実的な夢想家」でなくてはならないのです。

私がこの3ヶ月ぼんやりと考えていたのは、まさにこんなことなのかもしれません。国会では毎日のように「効率」や「便宜」についてばかりが語られ、前に進む話はなかなか語られません。
 
たしかに電気のない暮らしはもう考えられないでしょう。電気が足りないことで日本の経済はガタガタになってGDPが世界で10番目ぐらいまで下がるかもしれません。でもそれじゃ駄目なんでしょうか?
 
そろそろ私たちは、電気がたくさんあることで得られる豊かさではなく、別のところにある豊かさを探すべきなんじゃないかと思うのです。
 
 
最後に村上春樹が引用している広島の原爆死没者慰霊碑の言葉を私も引用しておきます。

「安らかに眠って下さい。過ちは繰り返しませんから」

 
 
東日本大震災で亡くなられた方のご冥福をお祈りし、被災された方にお見舞いを申し上げます。
 
・村上春樹受賞スピーチ「非現実的な夢想家として」全文[Link]
・写真はWikipediaより原爆死没者慰霊碑[Link]

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